Makuakeプロジェクトや泉大津市長のご来店など色々と目まぐるしい毎日ですが、新商品も少しずつ入ってきております。今日はその中の一つ、国産カーフのミニウォレットについて。国産カーフについて、5月にこんな記事を書いておりました。
tavarat.hatenablog.jp和歌山のタンナー(皮革製造業者)、株式会社藤本安一商店さんで作ったカーフレザーについての記事です。こちらの革を使った製品がついに仕上がってまいりまして、先日より販売をスタートさせています。
革の詳細については上記の記事を参照頂きたいのですが、簡単におさらい。基本的にドイツやフランス製が有名なカーフ(生後6ヶ月未満の子牛より作られた革)レザーですが、国産のものも多くはないですが作られています。ただ、多くは高級革靴などに使われて、革小物として出回るものはほんの一握りです。今回はそんな貴重なカーフレザーを藤本安一商店さんに仕上げて頂き、一つの製品として作り上げました。
国産カーフL字ミニウォレット
出来上がったのはL字のミニウォレット。よく見る形ではありますが、しかし細かな拘りを込め、さらにこの革ならではの特色がこの財布には詰まっています。
この財布の特色は、コンパクトな中に小銭、お札、カード数枚をまとめて入れられること。ちょっとしたお出かけとか、ポケットへ入れておくのにちょうど良い形なのです。メインの財布、もしくはカード入れが別にあればあとはこの財布だけで十分収容できます。形はこの形状と同じような正方形に近いものから横長のものなど色々とありますが、お札が引っかからないちょうど良い高さでこの財布は仕上げています。オールインワンのはずなのにお札がファスナーに引っかかりやすければ意味がありません。
使いやすい一方で欠点は小銭の取り出し。ある程度しっかり入れる人だと特に不便はないですが、小銭をきっちり使う人は底の方に溜まってしまうので取り出しにくいと感じるかもしれません。ただ、それは硬い革の時に顕著でもあります。この形を柔らかいカーフレザーで作った理由の一つは開きやすさにあります。外はもちろん、中の小銭入れもしっかりと開きますので取り出しにくさは軽減されます。
革が柔らかいとカードは大丈夫?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この財布の場合カードは束ねて保管します。そのため強度が上がるので、普通の使い方で折れることはまずないと思います。カードポケットがあって段になっているほうが実は重ならない部分が多く折れやすいのです。ただしお尻ポケットに入れるような場合はカードは入れない方が良いです。
カーフレザーは中のポケットにも使用しています。内側にひっそりと入れたロゴ、格好良いと思いませんか?この写真でおわかりのとおり、革の裏側には裏張りをしています。これは合成皮革になります。合成皮革といってもピンきりですが、こちらは財布の内装用に作られた強度の高いものになります。表がカーフレザーという非常に柔らかい革なのでそれだけでは強度が弱いため、この財布はカーフレザー×芯材×合成皮革という3層にし、型崩れを抑えたり財布としての強度を保ったりしています。この形の財布はだいたいのメーカーさんが裏地を張らずに作りますが、こうして裏地を張ることで耐久性を上げたりカードや小銭の滑りを良くして取り出しやすくするという工夫をしています。
ファスナーもYKKの最高峰ファスナーエクセラを使用。硬すぎて開けにくいとか、緩すぎて勝手にファスナーが開いたといったこともなく、非常にスムーズな開閉です。
さて、仕様の説明が終わったところでこのカーフレザーの魅力についてあらためて書かせて頂きます。先ほど柔らかいので開きやすいということは書かせて頂きました。子牛からできた革は非常にしなやかで、大人の革とは全く違う質感を実感頂けます。特にこの革は極端な加工をせずに非常にナチュラルに仕上げています。そのため柔らかさとともに特徴的なのが肌触り。成牛の革はしっかりとした張りのある感じになりますが、この革は非常に滑らかなさわり心地を感じられます。ネット上では表現のしようがないのですが、スタッフは「ずっと撫でていたい革」と表現しておりました。
柔らかさについては上の写真の通り、何の力も入れずに大きく開きます。固い革ではこうもいきません。
経年変化
この革の特徴は何と言ってもその変化にあります。ポリッシュという艶出しの仕上げを最低限に抑え、肌触りや表情を大事にした仕上げにしています。ありのままのカーフといっても良い、ナチュラルな仕上げなのです。革の鞣しは植物タンニンであり、染色は染料。このナチュラル仕上げ×タンニン×染料仕上げの組み合わせでどんな革よりもその変化を楽しむことができる仕上がりになっております。
まず第一の変化が艶。上の写真の右が使用前、左が使用約2ヶ月です。艶だし加工を最低限に抑えている部分が約2ヶ月の使用でこのように艶のある表情へ変化します。ここからはタンニンの性質によって日焼けや脂分の吸収により、時間をかけてより色濃く深みのある革質へ変化して行きます。他の色は革の端切れで試したものですがこちらは1ヶ月ほど半分のみを毎日手で触ったもの。右がbefore、左がafter。
ブラック↑
ネイビー↑
ブラウン↑
こういった革の変化を楽しめる財布としても、特に革好きの方に気に入っていただけるんと思っております。
ちょうど昨日新しい企画の相談で株式会社藤本安一商店さんにお話を聞きに行ってきました。担当頂いている藤本拓朗さん、革に関する熱いお話にいつも時間を忘れて聞き入ってしまいます。このカーフは和歌山の老舗タンナーの歴史と拘りと技術が詰まった革でもあるのです。
余談ですがカーフレザーの大きさは一枚で約80デシ。(デシは革を表す単位。1デシ10×10cm)。成牛の革は半分の半裁で約250デシ。1枚になると500デシですからカーフは成牛の約6分の1程度になります。1枚から取れる製品の数は当然少なくなり、そのぶん希少性も高くなります。大きさだけでなく、繊細なカーフを鞣すには高い技術も求められるのです。
↑が藤本さんがカーフを両手で広げたところ。成牛は両手で広げるなんてできません。これもカーフならではの光景といえます。
革を表現するとき、「唯一無二の素材」という言葉がよく使われます。これは革が動物であり、1頭1頭それぞれがもつ特徴・・・傷であったりシワやトラであったりがあり、他に2つとない革となることを指すのですが、今回のカーフレザーはそれらも含め、この製品のためだけに仕立てて頂いた革でもあります。他では手にすることのできないまさに「唯一無二の革」となるのです。
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