国産カーフレザーの仕上がりを確認しに和歌山へ

和歌山のタンナー、株式会社藤本安一商店へ

4月は3箇所の工場へ行ってきましたがそのうちの1つが和歌山のタンナー(皮革製造業者)、株式会社藤本安一商店さん。昨年はこちらで作って頂いたオリジナルの革を使って革手袋を作りました。

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購入頂いた方からは好評を頂きましたが今年も1アイテム、オリジナルの革で製品作りを進めております。使用する革が仕上がったというご連絡を受けて、4月半ばに和歌山へ行ってきました。

今回使用する革はこちらになります。

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といいましても画像だけを見ると何も伝わりませんよね。今回作って頂いた革はカーフレザーです。カーフレザーといいますのは生後6ヶ月以内の子牛の皮から作られる革をさし、肌理の細かさ、柔らかさといった特徴がございます。

革の分類・特徴については過去記事を参照下さい。

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上記記事に記載しております商品、Tps-015ベルトもカーフレザー。こちらはドイツにあるワインハイム社製のカーフでございました。現在国内の小物類に使用されるカーフレザーは多くがドイツ製かフランス製の伝統的なカーフレザーです。

純国産カーフレザー

今回はタンナーさんに来ているわけなので、当然ですが海外の革を仕入れてきたのではありません。こちらでなめし・染色を行って仕上がった革を見に来たのですが、仕上がったものは国産のカーフレザーです。北海道産の原皮を使い、こちら和歌山でなめした、原皮から加工までの全工程を国内で作り上げた純国産のカーフレザーとなります。

ドイツやフランスのカーフが多く、国内産のカーフレザーがあまり流通していない理由を聞いてみました。伝統的に作られるそれらのカーフレザーの品質の良さもあるのですが、まず国内の原皮自体の流通量の少ないという根本的なところ(ヨーロッパで食べる肉の量と日本で食べる肉の量、圧倒的に違いますものね・・・)と、国内の限られたカーフレザーは主に革靴用として流通するためにこうやって小物用として使用されることは稀なんだそうです。「国産カーフ」とgoogle検索をかけると確かに革靴がたくさんHITします。どこのタンナーさんでも簡単に手に入るものではなく、上質なものを選りすぐるとさらにその数は限られるといいます。今回はそんな希少な国産カーフレザーを製品作りに使用させて頂きました。

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カーフレザーの特徴

上の写真をご覧頂いたらお分かりになるかと思いますが、生後6ヶ月以内の子牛の皮ということもあって非常に小さいです。革をご覧になったことがある方は少ないと思いますのでこれが小さいか大きいかというのはわかりにくいかもしれません。簡単に言葉で書かせて頂きます。

一般的な革、成牛の革ですとまず大きすぎてそれ1枚では取引されず、背中で半分に裂いた「半裁」と呼ばれるサイズで取引されるのですが、その半裁だけで人がすっぽり隠れてしまうくらいのサイズがございます。長さで2m半ば~3m、幅で1m前後です。上の写真は人が両手で革を広げているところですが、カーフレザーは半裁ではなく1枚の革で上半身を覆うくらいのサイズしかないのです。成牛とカーフの大きさの違いをなんとなく実感頂けるかなと思います。

子牛ということでその特徴は何と言っても肌理の細かさです。これはベルトの記事でも書かせて頂いたことです。ただ、私自身肌理の細かさについて、勘違いしていた部分もありました。

いぜん藤本さんにとあるショップで売られていたカーフレザーの財布をお見せしたことがあったのですが、藤本さんが「山本さん、これカーフじゃないかもしれません」と言うのです。そのカーフはヌバックのような作りになっていて、一見「肌理の細かさ」がわかりにくいとも思ったので何で見分けているんだろうと聞いてみると、やはり肌理の細かさを見ているとのことでした。肌理の細かさというと、ベルトで使用したカーフのような滑らかで凹凸のないようなものを勝手に想像していたので頭が混乱しそうでしたが、どうやら肌理の細かさとは表面の滑らかさとかそういったところではないみたいです。革に詳しい方なら「当たり前やないか」と怒られそうですが・・・・。まだまだ知識が浅いなと実感し、そこから俄然カーフレザーに興味がわきました。

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今回使用するカーフには上記のような小さなシボがあります。これは何か加工を施してできたものではなく、カーフが本来持つシボだそうです。ドイツのBOXカーフなどはTps-015ベルトのように凹凸の無い非常に滑らかなものか、型押しをしたものをよく見ます。凹凸の無いものを「肌理の細かさ」と大きな勘違いをしていた私ですが、上記写真のようにカーフの肌も成牛の革も当然「シボ」があり、流通している革の表面が滑らかなのはそのシボを引き伸ばす加工をしているからですよと教えて頂きました。

そのシボですが、成牛のそれと比べて非常に小さいです。今回はこのカーフならではの小さなシボをそのまま残し、製品化することにしました。肌触りも非常に滑らかで、成牛のゴツゴツした雰囲気とはまた違った、革としての良さがあります。

タンニンなめし×染料での染色

革のなめしはタンニンで行っています。ヨーロッパ産のカーフはクロムなめしが多いとおもいますが、今回はタンニンでなめし、変化を楽しめる仕上げにして頂きました。

こちらのタンニンなめしはドラムですが、1週間ほどかけてなめしを行い、じっくりとタンニンを浸透させています(ドラムですとクロムもタンニンも通常は1日です)。そのあと3泊4日で染料で染色。タンニンを染みこませた革は芯通しの染色が難しいそうなのですが、これも丁寧に時間をかけて染め上げていきます。

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なめし、染色、加脂の他色々な工程を経て最終的にポリッシュという加工を行います。

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機械で革に磨きをかけていく工程です。これによって表面に艶を出します。本革、特にタンニンなめしの革は使えば使うほどに艶感を増しますが、この工程はそれを人工的にある程度まで進める工程でもあるといいます。ただ、今回はその変化を特に楽しめるものにしたいというところもあってポリッシュ加工を1回のみにして頂きました。使用後にどんどん艶を増してゆくというのを楽しんでもらえる商品にしたいという思いからです。製品によってそれは良し悪しとなりますが、今回は特に手で触れることが多い使い方になるのでそのほうが面白いかなというところで藤本さんと話し合って1回のみに致しました。仕上がった革は一見ヌバックのようなマットな仕上げになっています。

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今回は貴重な国産カーフをできるだけナチュラルな状態で製品化できるように革を仕上げました。シボをそのままに、染料での染色、1回のみのポリッシュ。ですのでおそらく使い始めと数ヶ月、そして数年後では全く違った表情へ変化するのではないでしょうか。自分自身でもこの革の変化は楽しみで、製品が仕上がるのを心待ちにしています。

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カラーはキャメル、ブラウン、ネイビー、ブラックの4色。ブラック以外は濃くなればどんな表情になるでしょうか。

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製品を販売するまでにある程度の変化をご紹介できるようにするため頂いた端切れで経年変化をチェックすることにしました。端切れの半分を紙で覆い、覆ってないほうの半分を現在毎日手でぺたぺたと触っています。上の写真は雰囲気を出すために日に当てていますが日焼けすると極端に変わりそうなのでいまは日影で管理しています。

革は現在東京の工場で製品に加工中。完成が待ち遠しいです。

 

TAVARAT Store Manager 山本 

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