当店のマネークリップTps-006は販売スタートからはや2年弱が経過致しました。その間たくさんの方にご愛用を頂いており、製品としてもサテーナ加工、ホーニング加工、さらにイニシャル入りとバージョンアップを重ね、レビューでも概ね嬉しいお声を頂いてきました。ただ、その中で唯一気になるもの・・・。それは「隙間が開いてくる」というお声です。
Tps-006マネークリップは真鍮の板をくりぬき、それを折り曲げて↑の形にします。U字の部分がバネとなり、接点でお札を挟む機構なのですが一度に大量のお札を挟んでしまったり、使用の期間が長くなるにつれてバネの力は徐々に低下し、挟む力が弱くなってしまいます。
製品の仕様上致し方ないものではあるものの、この課題をクリアできるものは作れないか、そんな要望を工場へ伝え、持っている技術の中で可能な方法を模索してもらいました。企画がスタートしたのは1年くらい前だったと思います。
工場から頂いた提案は数通り。その中から「これで行こう」と決めたのがトップの画像にある形。「マネークリップ」と言われるとちょっと違和感があるかもしれませんが、紛れもなくお札を挟むために作られたマネークリップです。
このマネークリップはコの字の形になっています。ダジャレではないですよ・・
断面はこの通り。コの字の真鍮製躯体から、だらんと何かが垂れ下がっております。これはステンレスの板になりますが、コの字の上部の裏側には溝が掘られていて、そこにこのステンレスの板がはめ込まれています。そのステンレスがバネの役割を果たすのですが、仕組みは下記の通り。
これが上手く伝わるかどうかわかりませんが、ステンレスのバネ性を使ってお札を挟み込む仕様です。従来の形は開けようと思えば力を加えれば極端なことを言えば180度まで開くこともできます(もっといけますが折れてしまうかも)。この形状ではステンレスの長さがこの枠内で形を変えて移動することでバネ性を発揮するので、外れない限りはバネ性が落ちることはありません。
図解でうまく伝わるものかどうかわからないのですが、細いステンレスの動き、しかも躯体の内部となると写真で上手に見せるのもまた難しいのです。悪しからず・・・
お札を挟むとこのような形に。イラストよりもクシャっと推し潰れたようになりますが、お札を抜くと元通りに。なかなか不思議なものです。
スレンレスの金具が真鍮躯体の内部の隙間を動くことでバネ性を発揮するのですが、お札を挟む際にわずかに「カシャ、カシャッ」という音がしますが、これがまた機械的で格好良いのです。
表面にも色々と手間を加えております。まず金属面。メッキを施すまえにしっかりとバレル研磨にてバリ(角ばりなど)を取っておりますので金属が衣服に引っかかって・・・というようなことはありません。当たり前の加工なのですが、最近amazonなどでは写真の見栄えとは裏腹に届いたものは一切バリの取られていないもの・・・といったこともあるようですので一応記載しておきます。
メッキの上に、上段と下段はサテーナ加工。無数の筋を入れることで艶を抑えた落ち着きのある印象になります。指輪などの貴金属にも使われる加工ですね。側面は鏡面仕上げです。
この製品の見た目のインパクトを強くしているのが上段にはめ込んだ本革。Tps-001などにも使用している姫路産のピットなめしフルベジタブルタンニンレザー。染料による仕上げで革本来の表情があり、かつ深くエイジングしてゆく革です。手で何度も何度も触るマネークリップですので何の手入れをせずとも綺麗に色合いを変化させていってくれます。
クリップ式の旧来の形から機能的な部分でデメリットといえば重さになります。バネをしっかりと支え、形を崩れないようにするために厚みをあまり削げ落とすことができず、当店のクリップ式のものよりも2倍強の重さになっています。とはいえ元々あちらがかなり軽量仕上げになっておりますので普段から重めのものを使用されている場合はそれほど気にならないかもしれません。
もう一つは挟む枚数が限られること。幅が決められておりますので当然ですがそれ以上の枚数は挟めません。日本のお札二つ折りで約15枚。ただしTps-006も実用的に挟めるお札は同じくらいです。
あとは値段が上がってしまうこと。素材の重量が変わり、作りも複雑になり加工も増えるために値段も全く異なってきます。ただしクリップ式のバネ寿命よりも長持ちすることを考えた場合にどちらが良いか・・・という選択肢になるかと思います。
これらのメリット、デメリットをふまえ、クリップ式のマネークリップTps-006や021と、この新しい形のマネークリップ「U-clip Tps-058」の二つの形からお客様にあったものを選んで頂ければ幸いです。
胸ポケットからだす仕草はきっとスマートに映ることでしょう。
今回の製品もセカンド名刺入れなどでいつも一緒に製品開発をして頂いている宇内金属工業株式会社様との共同開発。いつも色々なアイデアを提案頂きながらともに製品開発を進めています。
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TAVARAT Store Manager 山本
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