本革の染色方法の違い。染料染めと顔料染めについて

本革製品には基本的に色がついています。良く見かけるものはブラック、チョコ(ダークブラウン)、キャメルといった色でしょうか。これらは当然ですが、本革そのものの色ではなく、薬品によって色を染めております。

 

今日はその染め方の違いと、それによる製品の特徴の違いを簡単に説明させて頂きます。これを知ることで革製品への接し方やイメージ、愛着も違ってくるかもしれません。染め方は大きく分けて2つ。染料仕上げと顔料仕上げです。染料は繊維を染める方法、顔料は表面を塗る方法です。それではそれぞれの染め方の概要と、特徴、メリットやデメリットをご説明させて頂きます。

 

染料仕上げ(アニリン仕上げ)

染料で繊維を染めてゆきます。革本来のシワ、傷、トラ、血筋といったものをほとんど損なうことなく染めることができます。↓のように銀面(革の表面)の様々な表情はそのまま残りつつ、しっかりと染められています。

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さらに革の断面や床面(裏側)も色がついています。

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【メリット】

・革本来の表情を(シワ・トラ・キズ・血筋など)を楽しむことができます。
・傷はつきやすいが、目立ちにくい(内部まで染まっているので表面が傷ついても馴染むと目立たない)
・断面(コバ)の処理がしやすい
・一枚革(貼り合わせでない)の製品が作りやすい
・経年変化と呼ばれる革の色合いや質感の変化を楽しむことができる(なめし方にも由来する)
・自然な風合い、手触りである

 

【デメリット】
・動物本来の特徴とはいえ、傷などがある。
・染めムラが出やすく、ロット間による色の違いが必ず出る。
・使用と共に色が変わってしまう
・耐水性が低いため、色落ちがしやすく、雨染みなどがおきやすい

 

染料仕上げは革本来の表情を楽しめて、なおかつ革の特徴的な変化を味わえる、「革らしさ」を何よりも楽しむことができる染め方です。タンニンなめしの染料仕上げなどはその最たるものとなります(クロムなめしだと経年変化は少なくなります)。革の特徴である傷やシワ、トラなどの表情、変化を楽しめる方にお勧めです。

逆に、革の特徴をあまり良しとしない場合にはそのデメリット面がネックになることがございます。店側の都合としてもこのデメリットが色々とハードルにもなります。革らしさ、革本来の味わいといった点で染料仕上げの革は非常に魅力的ですが、製品1つ1つに傷やシワなどの特徴の位置、数が異なり、またロット間で色が違ってくることが多いのでそれをどうお伝えしてご理解いただくかは課題であり難しい面がございます。

購入されるお客様の立場としましては、染料仕上げの商品については画像に表示されているものと少なからず色や特徴が異なってくるという点は注意すべき点となります。

 

顔料仕上げ

染料が繊維の内部まで染めていくのに対し、顔料は革の表面に色をつける仕上げ方となります。

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【メリット】
・革が持つ特徴(シワ・トラ・キズ・血筋など)を目立ちにくくできる
・色落ちがしにくい
・長期間使用しても色の変化は少ない
・傷がつきにくい、多少の耐水性がある(染料に比べたらという程度ではある)
・ロット間の色ぶれが少ない

 

【デメリット】
・革本来の表情があまり出ない
・色が鮮やかになることが多い
・革らしい自然な手触りがなくなることも
・一枚革の製品が作りにくい
・深い傷や割れが入った場合、色がついている部分を越えると元の色(タンニンなめしであれば生成り、クロムなめしであればライトブルー)が見えてしまう

※追記
記事の最後に書きましたセミアニリン仕上げ(染料で染め、顔料を表面に吹き付ける)であれば、その程度によって、染料と顔料の良い部分を兼ね合わせることもできます。最近の革はこのような仕上げにされていることが多いです。顔料をどれだけ吹き付けるかで、
革の表情を残す⇔均一感を出す
製品にあわせて、どのバランスで作られた革をチョイスするかは変わります。

セミアニリン仕上げの場合、表面が傷ついたときは中の染料染色部分がでてきます。色差があるので傷がついたというのはわかりますが、よほど深い傷で無ければ目立ちにくいとは思います。

 

顔料仕上げの革は「革本来の特徴」を活かすことには欠けていますが、「革本来の特徴」をデメリットと考えた場合にその点をカバーすることができます。販売側のメリットとしても、ロット間の色ぶれや傷の目立ちにくさなどは大きいポイントです。

一方で、やはり本革独特の特徴が損なわれやすいという点はデメリットと考えるべきポイントです。本革製品を買ったのに経年変化がおきない・・・と後悔される方もいらっしゃいますので気にされる場合は購入前に注意が必要です。

 

おおまかな点ではありますが、染料仕上げと顔料仕上げの違いについて書かせて頂きました。どちらの染め方にもメリットデメリットがあり、どちらが良いか悪いかというよりもどちらを好むかという点に尽きるかと思います。

 

染料仕上げと顔料仕上げは製品の特徴、革の特徴、はたまた各ブランドの意向などでどれを使うかが決まってきます。革製品を前面に押し出すブランドさんなどでは革本来の良さを知ってほしいと染料仕上げの革を使うことが多いですが、大手のファッションブランドさんなんかでは商品間のブレが少ない顔料が使われることが多い気もします。男性向けブランドさんなら経年変化の味がでる染料仕上げが重宝されたり、女性向けブランドさんなら変化が少ない顔料仕上げが多かったり。

 

革製品の「革独特の特徴や変化を楽しんでほしい」という気持ちもございますので、ぜひ染料仕上げの革を使ってみて欲しいという思いもございます。

 

お買い求め予定の製品の革に求めるものがある場合、一度ショップさんに聞いてみるのも良いかもしれませんね。当店の商品をご検討で製品の仕上げがどういったものか確認したい場合はご遠慮なくお問合せ下さいませ。フェイスブックページのコメントやメッセージでも構いません^^

 

ちなみに染料仕上げの特徴と顔料仕上げの特徴を合わせた「セミアニリン仕上げ」という加工もあり、高級車のシートなどにも使用されたりしています。先日私が訪れたタンナーさま(皮革製造業者)でもそのような加工が行われているのを拝見しました。染料で染めたあとに薄い塗膜を何度も重ねるかなり手間隙がかかるのを目の当たりにしたところでございます。

 

TAVARAT Store Manager 山本

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当店の染料仕上げの本革製品(一部)

 

当店の顔料仕上げの本革製品(一部)

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